IH・ガスコンロの選び方|14年営業が見てきた「料理スタイル別」の判断軸と後悔ポイント

新築・リフォームのキッチンで、ほぼ100%夫婦の意見が割れるのが「IHにするか、ガスコンロにするか」です。

「掃除がラクだからIH」「火力はやっぱりガス」「オール電化でランニングコストが下がる」「災害時はガスじゃないと」。それぞれもっともらしい理屈が並びますが、現場で14年営業をしてきた立場で見ると、多くの判断が「自分の料理スタイル」を起点にしていません

私JETは、住宅設備メーカーの営業として14年。IHもガスも、両方を扱ってきました。オール電化推しでも、ガス派でもない中立の立場です。

この記事では、IH/ガスで後悔した人の3つの典型パターン、料理スタイル別の判断軸、メーカー横断の強み・注意点を、両方扱ってきた営業の中立視点でまとめます。

目次

IHかガスかで後悔する3つのパターン

加熱機器の後悔は、料理性能そのものより「決め方」で生まれます。

①「みんなIHだから」で決めた

「新築は今、ほとんどIH」「オール電化が標準」という雰囲気で決める人が、一定数います。ただ、現場で見ると新築のIH採用率と、5年後の満足度は別物です。

実家がガスで、自分も20年以上ガスで料理してきた人がいきなりIHに変えると、最初の半年は確実に違和感を感じます。火力の感覚、鍋を振る習慣、煮物の対流の見え方。すべて変わります。

② 試食・体験なしに即決した

ショールームでIHを見ても、実際にお湯を沸かすデモは見られても、自分が普段作る料理を作ってみる機会はほとんどありません。ガスからIHに変える場合、特に大事なのが「自分の鍋やフライパンが使えるか」「自分の火力感覚に合うか」です。

③ 災害時の不安だけで決めた

「災害時にIHは使えなくなる」という話を聞いて、ガスにする人がいます。これも一理ありますが、ガスも停電すれば点火しないモデルが多いことは意外と知られていません。災害時の話は後で正確に書きますが、「不安だけで決める」のは危険です。

料理スタイル別の判断軸

ここからが本題です。「IHか、ガスか」は料理スタイルで決まります。

IH vs ガス 料理スタイル別の判断軸

🔥 IH向き

  • 煮込み・無水調理が多い
  • 掃除のしやすさを最優先
  • 小さい子供がいる
  • 共働きで時短調理
  • キッチンの空気を汚したくない

🔥 ガス向き

  • 中華・炒め物が多い
  • 直火で炙る・焼き付ける料理
  • 鍋を振る習慣がある
  • 複数鍋を違う火力で扱う
  • 土鍋・銅鍋を使い続けたい

IHが向いている料理スタイル

  • 煮込み料理・無水調理が多い:火加減が一定で長時間放置できる
  • 掃除のしやすさを最優先:天板がフラットでさっと拭ける
  • 小さい子供がいる:チャイルドロック・直火なしで安全性が高い
  • 共働きで時短調理が中心:自動メニュー・タイマーで放置できる
  • キッチンの空気を汚したくない:燃焼ガスが出ないので換気負荷が低い

ガスが向いている料理スタイル

  • 中華・炒め物が多い:強火で鍋を振る前提の調理
  • 直火で炙る・焼き付ける料理(魚の皮目を焼く、ステーキ等)
  • 鍋を振る・煽る動作が習慣化している
  • 複数の鍋を同時に違う火力で扱う
  • 土鍋・銅鍋・年代物の鉄鍋を使い続けたい

中華鍋・土鍋ユーザーの注意点

「IHだと中華鍋・土鍋が使えない」という話は、半分本当で、半分は古い情報です。IH対応の中華鍋・土鍋は、各メーカーから発売されています。底が平らで磁性体(鉄)が含まれていれば使えます。

ただし、鍋を振る動作、細かい火力調整、底の丸い昔ながらの中華鍋などが習慣化している人には、IHは合いません。逆に「鍋は普通に置いて使うだけ」「振らない」人なら、IH対応の中華鍋で問題なく中華料理は作れます。

→ より深い判断軸は 住宅設備で後悔しないために もどうぞ

IHの実情(営業視点で正直に書く)

最新IHの火力は本当に弱いのか

「IHは火力が弱い」というイメージは、10年以上前の話です。現在の上位グレードIHは、ガスコンロの最大火力(4,000kcal/h前後)と同等以上の出力を持ちます。

ただし、3口同時に最大火力は使えない(ブレーカー保護のため)こと、直径27cm以上の鍋では熱伝達ムラが出るケースがあること、火力ステップが7〜9段階で感覚が違うこと、などの注意点があります。「火力が弱い」のではなく、「火力の出し方・感じ方が違う」が正確です。

操作性・タイマー・グリル機能

最新IHの強みは、火力そのものより操作の自動化です。鍋温度センサーで設定温度を維持、カラータッチパネル、揚げ物の油温を自動保持、焼き網不要のグリル等。「料理に集中する」より「料理を任せる」スタイルなら、IHの方が確実にラクです。

ランニングコストの実態

「IH=オール電化=光熱費が下がる」と単純化されがちですが、現実は電気料金プラン次第です。深夜電力プラン・夜間使用が多い家庭ではIHが安くなりやすいですが、最近の電気料金高騰の影響で、5年前ほどIHが圧倒的に安い時代ではなくなっています。

ガスコンロの実情

ガラストップの掃除のしやすさ

「ガスは掃除が大変」というイメージは、五徳の付け外しが面倒だった旧型の話です。最新のガラストップは、五徳が軽量で外しやすい・天板はガラスで拭くだけ・排気口カバーも丸洗い可能で、IHとそこまで大きな差はありません。

ガスの安全機能の進化

「ガス=危険」というイメージも、最新モデルでは大きく改善されています。Siセンサー(全口に温度センサー・消し忘れ消火・揚げ物温度制御)、吹きこぼれ自動消火、チャイルドロック、立ち消え安全装置などが標準装備です。

都市ガス/プロパンのコスト差

ガスコンロのランニングコストは都市ガスかプロパンかで大きく違います。都市ガスはIHと同等かやや安く、プロパンは都市ガスの1.5〜2倍程度になることも。地方のプロパンエリアではIHの方が有利になるケースが多いです。

⚖️ IH vs ガスコンロ 総合比較
項目IHガス
最大火力4,000kcal/h相当(上位機種)4,000kcal/h前後
掃除天板を拭くだけ五徳を外す手間あり
鍋振り不可(離すと停止)可能
中華鍋・土鍋IH対応品のみ制限なし
安全直火なし・チャイルドロックSiセンサー標準装備
停電時使用不可乾電池で点火可
ランニング電気料金プラン依存都市ガス安・プロパン高

災害時・停電時のリアル

IHは停電で使えなくなる

100%動きません。電気が止まれば終わりです。

ガスも完全に独立ではない

最近のガスコンロは点火に乾電池の電気を使います。停電だけなら、ガスは使えます。ただし、都市ガスは地震時にガス会社の安全装置で供給がストップすることがあります。プロパンは個別供給なので、本体が無事なら使い続けられます。都市ガスは地震時に止まる、プロパンは止まりにくいが現実です。

災害時はカセットコンロを1台常備
🚨 災害時の使用可否
状況IH都市ガスプロパン
停電のみ使用不可乾電池で点火可乾電池で点火可
地震(震度5以上)使用不可ガス供給が止まる本体無事なら使用可
長期停電使用不可電池あれば使用可電池あれば使用可

カセットコンロを1台置く現実解

私が施主さんにいつもお勧めしているのは、「IHかガスかを選んだ上で、カセットコンロを1台常備する」です。災害対策を理由にメインの加熱機器を決めるより、カセットコンロを1台買う方が現実的です。

ハイブリッド型・併用パターン

ラジエント+IHの実用性

3口コンロのうち、2口がIH・1口がラジエントヒーターのモデルがあります。ラジエントは鍋を選ばないので、IH非対応の鍋が使えます。ただし火力が弱く加熱に時間がかかるので、「たまにしか使わない鍋のための予備」と割り切れる人向けです。

1階ガス・2階IHのパターン

2世帯住宅では、「親世代の1階はガス、子世代の2階はIH」という併用パターンがあります。料理スタイルの違いを尊重できて、双方の不満が出にくい良い選択です。

オール電化でガス併用は可能か

オール電化契約でガス併用は、基本料金が二重にかかるのでメリットが薄れます。「カセットコンロで災害対策」「電気IH+電気グリル」の組み合わせの方が、コスト的にも管理上もシンプルです。

メーカー横断|各社の特徴

IH:Panasonic / 日立 / 三菱 / 東芝

Panasonic:「Wシャインゴールド」「IHプレート」など料理サポート機能の幅広さ。「凍ったままIH」など独自機能あり。機能を使いこなさないと宝の持ち腐れになることが注意点。

日立:「火加減マイスター」など微細な火力制御。パワーと繊細さのバランス型。上位グレードは価格が上がります。

三菱:「びっくリングIH」のリング状加熱で大鍋の均一加熱に強い。鍋振り対応の独自機構あり。機種展開は他社より少なめ。

東芝:価格と機能のバランスがよく、中位グレードが充実。「ザ・スタンダード」を求める家庭向け。

ガス:リンナイ / ノーリツ / ハーマン

リンナイ:「DELICIA」のオーブン機能・グリル性能。国内ガス機器シェアトップ。上位グレードは価格が高め。

ノーリツ:「PROGRE」など機能のバランス。給湯器との連動が強い。機種ラインナップは少なめ。

ハーマン(ノーリツグループ):「Stylish」「Famille」などデザイン性。コンロに特化した機能。給湯器との連動はノーリツ本体に劣る場合あり。

→ 給湯器との組み合わせは 住宅設備で後悔しないために でも書いています

ショールームで聞くべき5つの質問

  1. 「自分の家の電気容量で、このIHは最大火力を使えますか?」 → IH最大火力は電力契約に依存。
  2. 「今使っている鍋・フライパンの一覧を見せて、何が使えなくなりますか?」 → 買い替えコストの試算。
  3. 「冬場・夏場でランニングコストの差はどれくらいですか?」 → 季節別の実コスト感を聞く。
  4. 「停電時の対応は具体的にどうなりますか?」 → IH/ガスどちらにせよ運用を担当者に説明させる。
  5. 「修理対応・部品供給は10年後も大丈夫ですか?」 → 廃番リスクを事前確認。

よくある質問(FAQ)

Q1. IHは中華鍋・土鍋が使えないって本当?

A. 半分本当、半分は古い情報です。IH対応の中華鍋・土鍋は各メーカーから出ています。ただし「鍋を振る」「底が丸い昔ながらの中華鍋」は使えません。「鍋を置いて使うだけ」ならIH対応品で問題なく中華料理は作れます。

Q2. オール電化の方が光熱費は安い?

A. 電気料金プラン次第です。深夜電力プラン・夜間使用中心の家庭ならIHが安くなりやすいですが、電気料金高騰で5年前ほどの圧倒的な差ではなくなっています。プロパンエリアではIH有利、都市ガスエリアでは拮抗、が現場の感覚です。

Q3. ガスコンロは本当に時代遅れ?

A. 全くそんなことはありません。最新のガラストップガスコンロは、安全装置・センサー・自動消火が標準で、掃除のしやすさも大きく改善しています。「中華・炒め物・鍋振り」が多い家庭にはガスの方が合います。

Q4. ハイブリッド(IH+ラジエント)はおすすめ?

A. 「IH非対応の鍋を捨てたくない」「予備の加熱口が欲しい」人には選択肢になります。ラジエントは火力が弱く加熱に時間がかかるので、「予備の1口」と割り切れる人向け。

Q5. 災害が多い地域はガスかIHか?

A. メイン加熱機器を災害対策で決めない方がいいです。「IHかガスかを料理スタイルで決め、カセットコンロを1台常備する」が現実的な解です。

まとめ|加熱機器で後悔しないために

  1. 「みんなが選んでいるから」ではなく、自分の料理スタイルで決める
  2. IHかガスかは「鍋を振るか・振らないか」「直火を使うか・使わないか」で大きく分かれる
  3. 災害対策はメイン加熱機器ではなく、カセットコンロで補う
  4. ランニングコストは電気料金プランとガス種別(都市ガス/プロパン)で大きく変わる

加熱機器は、毎日3回使う設備です。10年は使うので、「自分の料理スタイル」を起点に決めるのが一番後悔が少ない方法です。

カテゴリ全体の判断軸は 住宅設備で後悔しないために にまとめています。

「うちの料理スタイルだとどっち?」みたいな個別相談があれば、お問い合わせ からお気軽にどうぞ。

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この記事を書いた人

住宅設備業界 通算14年。
空調設備の施工現場 → 国内大手住宅設備メーカー → 現在は海外住設機器の輸入元に勤務。

年間100泊超の外勤営業として、給湯器・浄水器・水回り設備の現場を全国で見てきた「住設プロ × 出張職人」。

このブログでは、メーカー資料を超えた "一次情報ベース" のレビューと、47都道府県中43都道府県を回った出張ノウハウを発信しています。

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