「八戸から弘前まで、1日で回れますよね?」――3年前の私は、地図アプリで距離だけ見て、平気でそう言っていました。結果は、青森の冬道で予定が2時間遅れ、最後の訪問先には電話で謝罪。高速代と時間と信用を、まとめて落とした出張でした。
住設業界で外勤営業を14年。年100泊の出張族として、北海道から九州まで全国を回ってきました。その中で、ルート設計の失敗は数え切れません。手書き地図で迷子になった時代、Googleマップを開きっぱなしでバッテリーを切らした時代、そしてChatGPTに丸投げして「存在しない最短ルート」を案内された時代――。
この記事は、そんな失敗の延長線上にある「いまの私の定番」を、時系列で全部出します。Googleマップ×ChatGPTを使った出張ルート設計術。教科書のような「使い方◯選」ではなく、失敗から逆算した実務家の手順です。
この記事でわかること
- 慣れない地域での移動失敗から学んだ、距離より「順番」の重要性
- ChatGPTに丸投げして遅刻した失敗と、そこから生まれた「AIはたたき台、検算は人間」の型
- Googleマップを「訪問先資産」に育てる、いまの定番ルーティン
- 浮いた時間を受注に変えるための、具体的な使い道
【失敗1】青森・八戸→弘前を1日で回ろうとした話
初めて青森エリアを担当したのは、ちょうど住設の納期混乱が始まった頃でした。社内の客先リストには、八戸・弘前・青森市内・むつの工務店が並んでいて、私は東京の感覚で「2日あれば全部回れるだろう」と踏みました。
結果から言えば、初日で計画は崩れました。八戸から弘前までGoogleマップの所要時間は約2時間。これだけ見ると東京〜静岡感覚です。ところが冬の青森では、橋の前後で速度が落ち、休憩のSAも限られる。さらに、訪問先が郊外の工務店だと、街中の地図感覚で「次の現場まで15分」と思っていたら30分以上かかる。距離ではなく、地域の移動感覚を持っていない人間が組むスケジュールは、ほぼ確実に破綻するのだと痛感しました。
このとき私は、最後の弘前のお客様に電話で30分の遅延をお詫びしました。商談は無事まとまったものの、初対面の挨拶が「すみません、遅れます」になる経験は、二度としたくないと心に刻みました。
【失敗2】ChatGPTに丸投げしたら「存在しないルート」で大遅刻
その後、ChatGPTが業務で使えるようになり、私は素直に喜びました。「これで出張ルートも一発じゃないか」と。最初に試したのは、関西出張で大阪市内6件+京都南部2件を回る日程。住所をコピペして、「最短で回れる順番と所要時間を出して」と頼んだのです。
返ってきたのは、見た目はきれいな表でした。ところが新大阪を出て1件目に向かった瞬間、Googleマップが提示する所要時間と、ChatGPTの想定が10〜15分ずつズレている。さらに、ChatGPTが提案した「裏道ルート」は、実際には工事中で進入禁止。次の訪問先には20分遅刻し、その日の最終アポは結局リスケになりました。
このとき初めて、ChatGPTは「最新の道路状況」も「リアルな交通情報」も持っていないという当たり前の事実が、体に染み込みました。AIは万能ではなく、「過去の情報をもとに、それっぽい答えを高速で組み立てる装置」。地図と組み合わせなければ、出張ルート設計には使えない。これが、いまの私の使い方の出発点になっています。
ちなみにこの「AIは万能ではない」という前提は、営業の他の場面でも同じです。リサーチやヒアリングへの活かし方は、AIとアナログを組み合わせる営業ハイブリッド戦略でも詳しく書いています。
【いまの定番】Googleマップ×ChatGPTで組む「外勤営業のルート設計術」
2つの失敗を経て、私のルート設計は次のような順序に落ち着きました。一言でまとめると、「Googleマップで地盤を作る → ChatGPTでたたき台を作る → Googleマップで検算する」という三段構えです。
ステップ1:Googleマップを「訪問先資産」に育てる
外勤営業の最大の財産は、人脈と「行ったことのある場所」です。私は数年前からGoogleマップのマイマップとスター機能を使い分けて、訪問先を蓄積しています。
- 緑のフラグ:既存客(過去に訪問・受注経験あり)
- 黄色の星:見込み客・名刺交換止まりの先
- ハート:ランチや作業に使える静かなカフェ・コワーキング
このタグ付けがあるだけで、ある地方に出張する直前に地図を開けば、「このエリアにはまだご無沙汰な見込み客がN件残っている」が一目でわかります。出張の生産性は、現地に着いてからではなく、出発前のこの地図整理でほぼ決まると感じています。
ステップ2:ChatGPTで「順番のたたき台」だけを作る
訪問候補が決まったら、ChatGPTには「順番のたたき台」と「論点整理」だけを頼みます。具体的なプロンプトはこんな感じです。
次の訪問先を、移動効率と打合せ目的を考えて、回る順番のたたき台を作ってください。 正確な所要時間は私がGoogleマップで検算するので、目安でOKです。 【日付】2026/5/22(金)9:00〜18:00 【出発地】新大阪駅 【訪問先】 1. A工務店(大阪市西区/設備提案フォロー) 2. B住設(堺市/新規ヒアリング) 3. Cハウス(東大阪/クレーム対応兼受注確認) 4. D設計事務所(京都市南区/関係構築) 各訪問先で「最低限話すべき論点」も3つずつ出してください。
ポイントは、所要時間の精度はChatGPTに求めないことです。あくまで「全体像」と「議題整理」のために使う。これだけで、白紙からスケジュールを組むより圧倒的に速くなります。
商談前の事前リサーチをさらに踏み込みたい場合は、NotebookLMで顧客リサーチを仕込む方法と組み合わせると、移動中に頭の中まで仕上がります。
ステップ3:Googleマップで検算し、現実のルートに落とす
ChatGPTのたたき台が出たら、必ずGoogleマップに「目的地を追加」して、実際の所要時間を確認します。私はここで、次の3点を必ずチェックしています。
- 移動と移動の間に、最低15分のバッファがあるか(駐車場探し・トイレ・電話)
- 昼食時間が、訪問先の近くに確保できているか(移動中に食べる前提にしない)
- 最終訪問先からの帰路が、新幹線・特急の現実的な時刻と合っているか
この検算で、ChatGPTのたたき台が「机上の空論」から「動かせるスケジュール」に変わります。長距離移動が絡む日は、車内時間の使い方も成果に直結するので、新幹線・長時間移動を快適にするグッズと過ごし方もあわせて読んでみてください。
浮いた時間を「成果」に変える3つの使い道
この三段構えで、私のルート設計時間は、以前の3分の1以下になりました。週に1〜2時間は確実に浮きます。問題は、その時間を「ぼーっとSNSを見て終わる」か、「受注に近づく行動に使う」かです。私は次の3つに割り当てるようにしています。
- 追加の1件アポを入れる:黄色の星(見込み客)に「近くまで来るので15分だけ」と打診する。半年で2〜3件の受注に繋がります。
- 提案資料の精度を上げる:当日の訪問先1件あたり、現場に合わせた写真や事例を1枚追加する。これだけで成約率は明らかに変わります。
- 移動中の休息に充てる:疲労は判断ミスとクレームの母です。あえて何もしない時間を確保することも、長期で見れば立派な成果対策になります。
出張道具の中身も、この「浮いた時間に何をするか」とセットで考えると、選び方が明確になります。私が常に持ち歩いている10アイテムは、出張族が選ぶ持ち物10選にまとめてあるので、よければ参考にしてみてください。
【失敗3】「Googleマップさえあれば大丈夫」で痛い目を見た日
ChatGPT遅刻事件のあと、私はしばらく「やっぱりGoogleマップ単体で十分だ」と振り子のように戻りました。ところが、これも極端でした。ある初夏の九州出張。福岡市内3件+久留米2件+鳥栖1件の日程を、当日朝にGoogleマップだけで組んだのです。
地図上はうまく繋がっていました。しかし、訪問先の「打ち合わせ内容の重さ」を考慮していなかった。1件目で図面のチェックが1時間ずれ込み、2件目では新規ヒアリングが想定の倍の時間に。地図は最短ルートを示すだけで、「この人と話すと長くなる」「この案件は今日のキーマンが出てくる」といった人間側の重みは教えてくれません。結局、夕方の鳥栖をキャンセルすることになりました。
この日から、「ChatGPTには論点整理を、Googleマップには距離検算を、自分には判断を」という今の役割分担が、頭の中で完全に固まりました。AIも地図も、片方だけでは外勤営業の現実には足りないのです。
私が外勤営業で使っている「ルート設計テンプレート」
失敗を重ねた末に、私が毎週金曜日に翌週分を仕込むときに使っているテンプレートをそのまま公開します。ChatGPTにそのまま貼れば、ある程度精度の高いたたき台が返ってきます。
あなたは外勤営業の出張プランナーです。以下の条件で、1日分の訪問順とタイムテーブルのたたき台を作ってください。 # 前提 - 業界:住宅設備の法人営業 - 移動:レンタカー(高速利用可) - 所要時間はGoogleマップで検算するので、目安でOK - 各訪問は45〜60分を基本、クレーム対応は90分 # 入力 - 日付:YYYY/MM/DD - 出発地と帰着地: - 訪問先(住所・目的・想定所要時間): # 出力 1. 訪問順(理由付き) 2. タイムテーブル案(移動15分バッファ込み) 3. 各訪問先で押さえるべき論点3つ 4. リスク(遅延・天候・道路工事の懸念点)
このテンプレートのキモは、「正確な所要時間はGoogleマップで検算する」と明示してあることです。これを書いておくと、ChatGPTが余計に頑張って「最短〇分」と言い切らなくなり、想定外の遅延を起こしにくくなります。
地方出張で特に効く「3つの小ワザ」
全国を回ってきた中で、地方出張のルート設計で特に効いている小さな工夫を3つ紹介します。どれも、私自身が痛い目を見て覚えたものばかりです。
小ワザ1:駐車場をマイマップに別レイヤーで登録
地方の工務店や設計事務所は、駐車場が分かりづらい場所にあることが多いです。「この前停めて怒られなかった場所」「コインパーキングの上限料金が安い場所」を別レイヤーで登録しておくと、2回目以降の訪問でストレスが激減します。
小ワザ2:訪問先の「在席率が高い時間帯」をメモに残す
「水曜午後は社長が現場に出ていることが多い」「火曜の朝イチは朝礼で捕まらない」――こうした情報をマイマップのメモ欄に書いておくと、次回のルート設計で勝手にChatGPTに渡せるようになります。これは地味ですが、空振り訪問が確実に減ります。
小ワザ3:「天気予報×訪問先タイプ」で優先順位を入れ替える
雨や雪の日は、現場立ち会いやショールーム訪問の優先順位を下げ、社内打ち合わせ型の訪問を前に持ってきます。これもChatGPTに「天気予報○○の前提で、訪問順を入れ替えて」と頼めば、たたき台を出してくれます。最終判断は自分でやる、というルールさえ守れば、AIは便利な相棒です。
よくある失敗パターンと、私なりの対処法
同業の営業さんとルート設計の話をすると、共通の「あるある失敗」がいくつも出てきます。私が経験してきたものと、その対処法をまとめておきます。
パターンA:詰め込みすぎて、1件目から押す
新人時代の私がそうでした。「せっかく現地まで行くんだから1件でも多く」と考え、1日6件以上を平気で組む。結果、1件目で15分押すと最終までドミノ倒し。いまの私は「1日5件まで、現場立ち会いを挟む日は4件まで」とルール化しています。ChatGPTにもこの上限を前提として渡すと、無茶なたたき台は出てこなくなります。
パターンB:移動中に資料を作ろうとして、結局できない
「新幹線の中で提案資料を仕上げる」――これも何度も挫折しました。電源が空いていない、隣の人が気になる、揺れて手書きメモが取れない。いまは、移動中は「考える」だけに割り切り、資料作成は前日夜か翌朝のホテルでまとめてやる方針です。長時間移動の過ごし方は新幹線の快適な過ごし方でも触れています。
パターンC:最終訪問先の帰路を、見切り発車で組む
「最終のアポは○時で、最終新幹線は○時だから余裕でしょ」と思って組んだら、駅まで30分・チケット購入5分・お土産買う10分で、危うく乗り遅れ――というケースが何度かありました。いまは、最終訪問先からの帰路は、新幹線出発時刻の60分前に到着できるルートで設計しています。AIには気づきにくい、人間側のリアルなマージンです。
数字で見る「ルート最適化の効果」
感覚的な話だけでは説得力に欠けるので、自分の手帳から拾った数字も載せておきます。Googleマップ×ChatGPTの三段構えを定着させてから、私の数字はこう変わりました。
- 週のルート設計時間:90分 → 25分(▲65分/週)
- 遅刻・遅延件数(月平均):3.2件 → 0.5件
- 1出張あたりの平均訪問件数:4.1件 → 4.8件(無理せず増えた)
- 「ついで訪問」からの新規受注:年2件 → 年6件
派手な数字ではないかもしれません。ですが、外勤営業の世界では、こうした「地味な積み上げ」が年間の数字を作っていきます。ルート設計は、決して雑務ではなく、立派な営業活動の一部だと感じています。
AIで効率化しても、結局「使いこなすスキル」がない人は伸びません。投資対効果の高い学びをまとめました。
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まとめ:地図とAIは「相棒」、判断するのは現場を知る人間
3年前、青森で遅刻して頭を下げた自分に教えてあげたいことが1つあります。それは、「ルートを考える時間を、商談を考える時間に変える方法は、ちゃんとある」ということです。
Googleマップは、訪問先という資産を蓄える台帳。ChatGPTは、その台帳から素早くたたき台を組むアシスタント。そして最後に判断するのは、地域の道と空気と人を知っている自分自身。この役割分担さえ崩さなければ、AI時代の外勤営業は、むしろ以前より戦いやすくなります。
住設の選び方や納期対応など、現場の話を腰を据えて聞きたい方は住宅設備の後悔しない選び方を、個別のご相談がある方はお問い合わせからお気軽にどうぞ。次の出張が、あなたにとって「移動」ではなく「成果」の1日になりますように。


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